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エイズ(えいず)

エイズとは、後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS )の略称で、ヒト免疫不全
ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症のことである。



■目次
 1 歴史
 2 疫学
 2.1 世界の現状
 2.2 日本の現状
 3 臨床像
 3.1 急性感染期
 3.2 無症候期
 3.3 発病期
 4 感染・予防
 5 検査
 6 治療
 7 治療による副作用
 8 社会意識とエイズ
 9 薬剤エイズ(薬害エイズ事件)
 10 世界エイズデー



■歴史
 ・1981年にアメリカのロサンゼルスに住む同性愛男性に初めて発見され症例報告された。ただし、これはエイズ
  と正式に認定できる初めての例で、疑わしき症例は1950年代から報告されており、「痩せ病」と言う疾患群が
  中部アフリカ各地で報告されていた。1981年の症例報告後、わずか10年程度で感染者は世界中に100万人にま
  で広がっていった。
 ・当初、アメリカでエイズが広がり始めた頃、原因不明の死の病に対する恐怖感に加えて感染者に同性愛者や
  麻薬の常習者が多かった事から感染者に対して社会的な偏見が持たれた事があった。現在は、病原体として
  HIVが同定され、異性間性行為による感染や出産時の母子感染も起こり得る事が広く知られるようになり、エイ
  ズ患者に対する差別的な偏見は少なくなった。
  しかし、この病気に対する知識の不足から来る差別・偏見の存在が今もなお問題視されている。



■疫学

 ○世界の現状
 ・現在全世界でのヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者は5千万人に達すると言われている。その拡大の殆どが
  アジア、アフリカ地域の開発途上国において見られる。サハラ以南のアフリカには全世界の60%近くの
  エイズ患者がいるといわれ、増加傾向にある。
  また一部の開発途上国では上昇していた平均寿命が低下しているという現状がある。近年では中国、
  インド、インドネシアにおいて急速に感染の拡大が生じて社会問題化している。2006年度、イギリスでの新
  規HIV感染者数は8925件、イギリス以外の
  西ヨーロッパでは16316件、アメリカには報告システムのない地域もあるが推計65000件である。


 ○日本の現状
 ・1985年、初めてAIDS患者が確認された。1989年2月17日、「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律」が
  施行。当初は大半が凝固因子製剤による感染症例だった。
 ・2006年度の新規HIV感染者数は952件(うち外国国籍113件)と、世界でも特に少ない水準にある。2006年に
  確認された日本人患者・感染者数は、同性間性的接触(男性同性愛)による感染が727人、異性間性行為に
  よる感染が男性242人、女性54人。静注薬物濫用や母子感染によるものは0.5%以下。国内での感染が87%、
  海外での感染が6.6%。外国国籍報告例は12.2%と、人口割合(1.68%)を大きく上回っているのも特徴。
 ・感染者数は、国外水準を考えれば横ばい乃至漸増傾向といえるが、首都圏や大阪近郊では確実に増加傾向を
  示しており、この地域だけで日本国内のHIV感染者数の八割以上を占める。また、新規HIV感染者の6割近く
  は東京都からの報告である。



■臨床像

 ○急性感染期
 ・HIVに感染して1~2週間程度で、全身倦怠、発熱など軽い風邪に近い症状に加え、突然の全身性の斑状丘疹
  状の発疹や複数の部位のリンパ節腫脹が見られる。また発疹や口腔カンジダを生ずる場合も多い。しかし、
  こういった症状に気付いても単なる風邪や蕁麻疹、口内炎として見過ごす事も多く、また症状が出ず気づか
  ない人もいる。これの症状は感染者全員に見られるものではないため(感染してから2-12週間の間に、60-
  80%の人が急性症状を示すという報告がある)、感染機会があった直後にこれらの症状があったからといっ
  て感染したと判断するのは早計であり、単なる風邪である場合もあるため注意をしなければならない。多く
  の場合、2-4週間に急性の症状を示すことが多いが、ごく稀だが10か月後に示すことも報告されている。そ
  のため、感染の有無は、血液検査をしない限り判断することはできない。その一方でウイルス量が急激に増
  加し重症化する例も確認されており、多発性神経炎、無菌性髄膜炎、脳炎症状などの急性症状を示す場合も
  ある。しかしながら、これらの症状はHIV感染症特有のものではなく、他の感染症や疾病においても起こり
  得る症状である事から、症状だけで判断することは困難である。重症例を除き、これらの症状は1週間から
  長くても2~3ヶ月程度で収まっていく。
 ・感染後、数週間から1か月程度で抗体が産生され、ウイルス濃度は激減する。一般のHIV感染検査はこの産
  生される抗体の有無を検査する為、感染後数週間、人によっては1ヶ月程度経過してからでないと十分な抗
  体が測定されない為、検査結果が陰性となる場合がある。


 ○無症候期
 ・多くの人は急性感染期を過ぎて症状が軽快し、だいたい5~10年は無症状で過ごす。この間、見た目は健康
  そのものに見えるものの、体内でHIVが盛んに増殖を繰り返す一方で、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞が
  それに見合うだけ作られ、ウイルスがCD4陽性T細胞に感染し破壊するプロセスが繰り返される為、見かけ上
  の血中ウイルス濃度が低く抑えられているという動的な平衡状態にある。無症候期を通じてCD4陽性T細胞数
  は徐々に減少していってしまう。
 ・またこの期間に自己免疫性疾患に似た症状を呈する事が多い事も報告されている。他にも帯状疱疹を繰り返
  し発症する場合も多い。
 ・無症候期にある感染者は無症候性キャリア(AC)とも呼ばれる。


 ○発病期
 ・血液中のCD4陽性T細胞がある程度まで減少していくと、身体的に免疫力低下症状を呈するようになる。
 ・多くの場合、最初は全身倦怠感、体重の急激な減少、慢性的な下痢、極度の過労、帯状疱疹、過呼吸、眩暈、
  発疹、口内炎、発熱、喉炎症、咳など、風邪によく 似た症状の、エイズ関連症状を呈する。また、顔面か
  ら全身にかけての脂漏性皮膚炎なども、この時期に見られる。
  大抵これらの症状によって医療機関を訪れ、検査結果からHIV感染が判明してくる。
 ・その後、免疫担当細胞であるCD4陽性T細胞の減少と同時に、普通の人間生活ではかからないような多くの日
  和見感染を生じ、ニューモシスチス肺炎(旧 カリニ肺炎)やカポジ肉腫、悪性リンパ腫、皮膚ガンなどの
  悪性腫瘍、サイトメガロウイルスによる身体の異常等、生命に危険が及ぶ症状を呈してくる。また、HIV感
  染細胞が中枢神経系組織へ浸潤し、脳の神経細胞が冒されるとエイズ脳症と呼ばれ、精神障害や認知症、酷
  い場合は記憶喪失を引き起こすこともある。最近は医療技術の進歩でエイズ死亡率は下がってきたが、なお
  エイズによって引き起こされる日和見感染症は、最終的に死に至る病気である事には間違いない。



■感染・予防
 HIV自体の感染力は非常に弱く、感染するのは次の場合に限られる。

 ○血液による感染
 ・HIVを含んだ血液が、傷口に直接触れた場合や、麻薬等で注射針を使い回しした場合等で、血液中にHIVが侵
  入することで感染する。日本では医療現場において注射針を使い回しする事は、現在は行われていない。し
  かし一部の外国では、未だに注射針を使い回しされている場合がある。
  特に海外で輸血を受ける場合は、十分に注意する必要がある。
 
 ○性交渉による感染
 ・HIVを含んだ性分泌液(精液、膣分泌液)が、体の粘膜(口腔粘膜も含む)に直接触れ、血液中にHIVが侵入
  することで感染する。従って感染を予防するにはオーラルセックスの段階からコンドームの適切な使用が必
  要である。原則として特定の相手(恋人、配偶者)間での交渉が望ましく、とりわけ男性同性愛者のそれは
  感染リスクが高い。男性同性愛者の場合は肛門性交を伴うケースが多く、直腸粘膜は膣粘膜よりも薄く傷つ
  きやすいためである。

 ○母子感染
 ・母子感染での感染の危険性が高いのは、産道通過時と母乳によるものであり、帝王切開や人工母乳(粉ミル
  ク)を使う事である程度防止できる。
  また周産期に感染する場合がある為、母親に対しては抗HIV薬を投与する事により感染を防げる場合がある。
 ・以上のように感染ルートは非常に限定され、日常の生活で感染する可能性は無い。


■検査
 ・感染の機会があってから3ヶ月以上経過した後であれば、採血による血液検査でHIV特異抗体を検出する事が
  でき、感染の有無を確認する事ができる。
  しかし、HIVの感染初期においては抗体が十分に作られず、血液検査では検出できない期間がある。この期
  間をウインドウ期間と呼んでおり、およそ1ヶ月ある。その為、この間に血液検査を行っても陰性と判断さ
  れてしまう。また抗体検査では非特異的な反応によって、あたかも陽性であるかのような偽陽性の結果が出
  る場合がある。その為、確定診断として、血中のウイルスRNAをRT-PCR法によって検出するウイルスDNA検査
  も広く行われている。
 ・検査は全国の保健所で匿名・無料で受ける事が出来る。また、自分の居住地以外の保健所でも検査を受ける
  事ができる。そして有料であるが、医療機関でも検査を受ける事が出来る。都市部の保健所では、夜間や休
  日にも検査を行っている所があり、仕事や学業に影響を与えず検査できる体制を整えつつある。結果はおよ
  そ一週間ほどで判明するが、近年は30分以内で判明する即日検査も普及し始めている。
 ・献血においては安全性の面から検査を行っているが、陽性であってもその結果は献血者本人に知らせないこ
  とになっており、それは感染リスクのある人間が、検査目的で献血する事を防ぐ為である。ウイルスが検出
  できないウインドウ期間があり、この期間に献血をしてしまうと、汚染血液が検査をすり抜けて輸血患者に
  ウイルスを感染させてしまう。その為決して検査目的で献血を行ってはならない。HIVのウインドウ期間は
  およそ2ヶ月ほどであり、最も感度の高い核酸増幅試験(NAT)では、感染後にウイルス血症が起こり平均11日
  ~22日後に検出可能であり、平均22日以降では抗体によって検出が可能となる。NATで検出が出来ない期間
  を「NATウインドウ期間」、抗体による検出が出来ない期間を「血清学的ウインドウ期間」という。感染が
  疑われる機会があった場合は、それから1ヶ月半以上経過の後に血液検査を行ってから、献血を行う事が望
  まれる。
 ・感染が疑われる場合は、第一に全国の保健所及び医療機関に相談する事が先決である。
 ・HIV検査・相談マップ:エイズ検査・性感染症検査の情報検索ページ被輸血者の自己防衛としては緊急時以
  外の手術の際の輸血は、医療側に自己輸血や、
  家族・友人など信頼出来る人からの輸血のみで行うように申し出ることが考えられる。



■治療
 ・現在効果的な抗HIV薬(詳細は抗ウイルス薬を参照)が開発され、多剤併用療法(HAART療法)により、血中
  のウイルスを測定感度以下にまで抑える事が出来る様になった。それに伴い、エイズの発症進行を大幅に抑
  える事に成功した。しかしながら、ウイルスの撲滅までには至っていない為、完治はしないが、抗HIV薬の
  開発改良は目覚しく、一日一回から二回だけの服薬で可能なほど進化している。その為、人によっては糖尿
  病と同じ一般的な慢性疾患として捉えられ、発症を遅らせる治療により、病気とうまく付き合いながら長期
  生存が可能になりつつある。免疫機能障害として、身体障害者手帳の交付対象となったこともあり、金銭的
  にも負担が少なくてすむようになった。
 ・日本以外のアジアやアフリカで薬剤が手に入り難い背景には、薬剤の開発及び使用に対する特許の使用料問
  題などの単純な経済的問題だけではなく、性がタブー視されている宗教的問題(イスラム圏など)、主権が
  国民に無く言論や行動に自由が認められていない政治的問題等の複雑な要因がある。
 ・2007年7月17日にタカラバイオ社は、RNA分解酵素を含有するレトロウイルスベクターを使ったエイズ遺伝子
  治療法において、細胞レベルでの検査で有効性が認められた事からサルの評価試験段階に移行を開始した事
  を発表した。 実験内容としてSHIV(サルのエイズウイルス)にMazFが導入されたT細胞ではSHIVは全く増えな
  かった。これまでの研究によりエイズ複製が抑制されエイズウイルス産生細胞は減少していく事を確認した
  と同社は発表した。
 ・今後は、サルへの評価実施試験で評価され、人への臨床試験へと段階的に移行していくものと思われる。



■治療による副作用
 ・新薬が次々と開発され、投薬治療によって病気自体はウイルスの減少により日常生活を送れるようになって
  きたが、その反面、強力な薬であるため副作用も強く、色々な問題が出てきている。長期の投薬による副作
  用により、肝臓病に至る場合もある。リポジストロフィーによる体脂肪異常は代表的な例である。



■社会意識とエイズ
 ・エイズに関する意識調査は、医学、歯学、社会学など様々な分野の研究者により行われており、エイズに対
  する社会意識の現状を報告している。研究報告の中には、依然としてエイズに対する恐怖感的・差別感的意
  識を持つ割合が多いとの報告や社会的認知度の増加、正しい知識を持つなどの肯定的意見の報告など様々な
  内容である。今後、更なる社会意識を把握する事により、身体的・精神的・社会的にエイズを撲滅できる施
  策を講ずる事が望まれている。



■世界エイズデー
 ・保健機関 (WHO) が、1988年にエイズ問題への人々の意識を高める事を目的として12月1日を制定した。

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