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感染症(かんせんしょう)

感染症(かんせんしょう、Infectious disease)とは、寄生虫、細菌、真菌、ウイルス、異常プリオン等の病原体の感染によって、より高等な動植物に生じる病気の総称である。ただし、感染しても症状を呈さないものもあり、それを不顕性感染と呼ばれるが、後に症状が出るものもあり一連の流れとして感染症と称する。

■目次
 1 総論
 2 「感染」とは
 3 感染症と法律
 4 感染症の分類
 4.1 伝染力からの分類
 4.2 感染様式からの分類
 4.3 病原微生物の種類による分類
 4.4 病態からの分類
 4.5 公衆衛生学的な分類
 4.6 感染場所による分類
 4.7 法律上の分類
 5 診断
 6 治療
 7 予防
 8 合併症



■総論

感染症の歴史は生物の発生と共にあり、有史以前から近代までヒトの病気の大部分を占めてきた。医学の歴史は感染症の歴史に始まったと言っても過言ではない。1929年に初の抗生物質であるペニシリンが発明されるまで根本的な治療法はなく、伝染病は大きな災害と捉えられてきた。

その後の微生物学・免疫学・薬理学・内科学・外科学・公衆衛生学の進歩を背景として感染症の診断・治療・予防を扱う感染症学が発展しつつある今日でも、世界全体に目を向けると感染症は未だに死因の約1/4を占める。特にマラリア結核エイズ腸管感染症発展途上国で大きな問題であり、感染症学のみならず保健学・開発学など集学的な対策が緊急の課題である。

先進国においては新興感染症・再興感染症に加えて、多剤耐性菌の蔓延やバイオテロの脅威が公衆衛生上の大きな課題として注目を集める一方、高度医療の発達に伴って手術後の患者や免疫抑制状態の患者における日和見感染が増加するなど、日常的にもまだまだ解決に向かっているとは言えない。



■「感染」とは

微生物学的には生体に微生物が侵入・定着した状態をいう。臨床医学的には微生物が侵入して定着し発症するまでの一連の過程をいう。ここで示される「感染症」の「感染」は後者の意味合いが強い。


■感染症と法律

日本では、感染症に対応するための法律として、従来の「伝染病予防法」、「性病予防法」および「エイズ予防法」が廃止・統合され、1999年4月1日から「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)が施行されている。


○感染症の分類
感染症は多種多様な分類方法がある。


○伝染力からの分類
*伝染病
個体の感染症が同種の個体に次々と同じ感染症が広がっていきやすい病気であるというニュアンスが強い。また、伝染病によって一定の地域で感染が広がることを流行 (pandemic) という。
*輸入感染症
旅行者や輸入食品を介して病原体が海外から持ち込まれ、国内では稀な感染症を生じるもの。
例:重症急性呼吸器症候群、デング熱黄熱病
*検疫伝染病
輸入感染症のうち一度国内に進入すると流行する危険のあるものは、検疫法によって検疫伝染病の指定されている。
例:コレラ、ペスト

○感染様式からの分類
一般には内因感染と外因感染に分けられる。

*内因感染
宿主の免疫力が低下したことによって、宿主の常在している微生物により症状を起こす場合をいう。一般的には易感染宿主に起こる日和見感染が代表的である。
宿主の常在している微生物が、本来無菌状態である臓器内に進入して起こる場合をいう。これを異所性感染という。
*外因感染
生体外から進入した微生物によって感染が起こるもの。詳しくは感染経路を参照。


○病原微生物の種類による分類
寄生虫、細菌、真菌、ウイルス、異常プリオン等の病原体が、それぞれに特有の感染経路を介して生体に感染し、増殖した病原体が特有の身体部位に特有のメカニズムで攻撃することにより感染症を生じる。

*細菌感染症
レンサ球菌(A群β溶連菌、肺炎球菌など)、黄色ブドウ球菌(MSSA、MRSA)、表皮ブドウ球菌、腸球菌、リステリア、髄膜炎球菌、淋菌、病原性大腸菌(0157:H7など)、クレブシエラ(肺炎桿菌)、プロテウス、百日咳菌、緑膿菌、セラチア菌、シトロバクター、アシネトバクター、エンテロバクター、マイコプラズマ、クラミジア、クロストリジウムなどによる各種感染症
結核、コレラ、ジフテリア、赤痢、猩紅熱、炭疽、トラコーマ、梅毒 、破傷風、ハンセン病、レジオネラ、レプトスピラ、ライム病、野兎病、Q熱など
*リケッチア感染症
発疹チフス、ツツガムシ病、日本紅斑熱
*クラミジア感染症
トラコーマ、性器クラミジア感染症
*真菌感染症
アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコッカス症、白癬菌症、ヒストプラズマ症、ニューモシスチス肺炎など
*原虫感染症
アメーバ赤痢、マラリア、トキソプラズマ症、リーシュマニア症、クリプトスポリジウムなど
*寄生虫感染症
エキノコックス症、日本住血吸虫症、フィラリア症など
*ウイルス感染症
インフルエンザ、ウイルス性肝炎、ウイルス性髄膜炎、後天性免疫不全症候群 (AIDS)、成人T細胞性白血病、エボラ出血熱、黄熱、風邪症候群、狂犬病、サイトメガロウイルス感染症、重症急性呼吸器症候群 (SARS)、進行性多巣性白質脳症、水痘、帯状疱疹、手足口病、デング熱、伝染性紅斑、伝染性単核球症、天然痘、風疹、急性灰白髄炎(ポリオ)、麻疹 、咽頭結膜熱(プール熱)、マールブルグ出血熱、ハンタウイルス腎出血熱、ラッサ熱、流行性耳下腺炎、ウエストナイル熱、ヘルパンギーナ、チクングニヤ熱など
*プリオン病
牛海綿状脳症 (BSE)、クールー、クロイツフェルト・ヤコブ病、致死性家族性不眠症 (FFI)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群 (GSS) など

○病態からの分類
*一次感染と二次感染
最初の病原体による感染を一次感染、続いて別の病原体による感染を二次感染という。また、同一宿主に2種類以上の病原菌によって感染が起こることを混合感染という。二次感染の一例として、一次感染を抗生物質で排除してもその抗生物質抵抗性の常在菌が異常増殖を起こす菌交代現象がある。
*局所感染と全身感染
病原体が侵入・定着部位に限局して病変を起こす場合を局所感染という。この病原体が血行性など全身に広がって症状が出た場合を全身感染という。
*持続感染と不顕性感染と潜伏感染
持続感染:病原体が生体から完全に排除されずに症状が治まっている状態。そういった状態の人を保菌者という。
不顕性感染:病原体に感染しても発症しない場合をいう。
潜伏感染:病原体に感染してもすぐ症状が出るわけではない。感染しても発症していない状態をいう。その期間を潜伏期間という。

○公衆衛生学的な分類
*新興感染症
輸入感染症のうち、継続的に国内での発症が見られるようになったもの。
例:後天性免疫不全症候群
*再興感染症
社会情勢の変化により、近年まで抑えられていた発症数が再び増加傾向を示すもの。
例:結核
*人獣共通感染症
ヒトとヒト以外の動物の両方に感染を生じ、予防対策に両者への介入を要するもの。
例:狂犬病、エキノコッカス


○感染場所による分類
*脳など中枢神経
髄膜炎、脳炎など
*顔
鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、喉頭炎、眼窩蜂窩織炎など
*首
甲状腺炎、レミエール症候群など
*肺・気管支
肺炎、気管支炎、結核など
*心臓・血管
感染性心内膜炎、心外膜炎、心筋炎、感染性大動脈炎、敗血症など
*腹
胆嚢炎、胆管炎、肝炎、肝膿瘍、壊死性膵炎、脾膿瘍、腸炎、腸腰筋膿瘍など
*泌尿器
腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、膣炎、骨盤内感染症など
*皮膚
蜂窩織炎、脂肪織炎、ガス壊疽、せつ、よう、伝染性膿痂疹(とびひ)、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、帯状疱疹、水痘、麻疹、風疹、皮膚白癬、疥癬など
*関節、筋肉、骨
感染性関節炎、骨髄炎、筋膜炎、筋炎など
*リンパ節
リンパ節炎

○法律上の分類
感染症法では以下のような分類がなされている。

一類感染症
二類感染症
三類感染症
四類感染症
五類感染症
新型インフルエンザ等感染症
指定感染症
新感染症



■診断
診断学
微生物学的検査
グラム染色
抗酸菌染色
直接鏡検
培養
ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)
免疫学的検査
抗体価
抗原検査



○治療
抗生物質/抗菌薬
外科的治療
免疫グロブリン製剤



■予防
予防接種
感染管理/感染経路



■合併症
一部の感染症は非感染性疾患の発症に強い関連を持つことが、近年明らかになりつつある。

ヒトパピローマウイルスによる子宮頚癌・外陰部癌
B型肝炎・C型肝炎による肝細胞癌
ヘリコバクター・ピロリ菌による胃癌
エプスタイン・バール・ウイルスによるバーキットリンパ腫
クラミジアによる動脈硬化
腸内細菌叢異常による炎症性腸疾患 (IBD)

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