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ミレニアム開発目標1 極度の貧困と飢餓の撲滅(みれにあむかいはつもくひょう1)

■具体的目標
1990 年から2015 年までに、1 日1 ドル未満で生活する人々の割合を半減させる。

『食料価格の高騰で、1 億人の飢餓が悪化するおそれ』
開発途上国における生活費の最新推計に基づく新たなデータは、世界の貧困の規模と分布に関する私たちの見方を一変させる可能性がある。しかし、あらゆる開発途上地域で経済成長が続いていることから、貧困の減少傾向は2007 年も続いたと見られる。開発途上国で2015 年までに、1 日1 ドル未満で生活する人々の割合を半減させるという目標は、依然として手の届く範囲にある。ただし、この目標達成は、アジアの大半における並外れた経済成長に負うところが大きいといえよう。対照的に、これまでの推計を見る限り、サハラ以南アフリカでは極度の貧困の削減にほとんど進展が見られていない。西アジアの貧困率は相対的に低いが、上昇傾向にある。また、独立国家共同体(CIS)と南東欧の経済体制移行国は、1990 年代初頭の貧困悪化から完全に立ち直っていない。
2002 年以来、特にサハラ以南アフリカをはじめ、西アジアやラテンアメリカなど、多くの開発途上諸国の成長に貢献してきた要因のひとつとして、石油を含む一次産品価格の高騰があげられる。輸出国にとって、これは朗報であった。しかし、石油をはじめとする一次産品価格は、これら商品を輸入する国々の成長を鈍化させた。その中には、世界の最貧国も多く含まれている。
最近の食料価格高騰は、貧困層に直接、悪影響を及ぼしている。中でも、食料を自給できない貧しい人々は、生活費に占める食費の割合が相対的に高いため、最も深刻な被害を受ける。食料価格が上昇すれば、これらの人々は食料だけでなく、教育や保健医療など、その他必須の財やサービスを入手できる能力も制限されてしまう。都市貧困層と農村部の土地なし貧困層のほとんどがこの状況にある。一方、貧農は自家消費を上回る生産ができれば、食料価格の高騰から恩恵を受けることができる。しかし、石油価格の高騰で肥料のコストが上昇していることもあり、そのための資源を持たない者も多い。全体的に見て、食料価格の高騰は多くの人々を絶対的貧困に追いやるものと見られており、推計によると、その数は1 億人にも達するおそれがある。そのほとんどはサハラ以南アフリカと南アジアに暮らす人々と見られるが、この2 地域はすでに、極度の貧困に苦しむ人々を最も多く抱えている。



1990 年以来、開発途上地域における極度の貧困は、全世界の最貧国について採用された貧困ラインに相当する基準を尺度として測定されていた。当初、1985 年価格で1日1 ドルと設定されたこの国際的貧困ラインはその後、1993 年の購買力平価PPP)で見た場合の1 日1.08 ドルへと改定された。
国際比較プログラム(International Comparison Programme)」の調査により、幅広いデータが入手できたことで、さらに多くの国々の購買力が比較できるようになった。2008 年初頭に発表された比較調査の結果を見ると、それまでの価格水準の推計値が大幅に修正されており、これによって、一部開発途上国の実質的経済規模についても修正が必要となった。世界銀行はこの新たなPPP 推計値を用いて、国際貧困ラインの見直しと、低・中所得国における貧困の新たな推計を行っているところである。
比較調査では、多くの開発途上国の価格水準が以前の推計よりも高く、従ってその実質的経済規模はそれまで考えられていたよりも小さいことが判明した。また、価格が予想よりも高かったことにより、一部地域については、貧困状態で暮らす人々の数と貧困率がそれぞれ引き上げられることになろう。この新たな尺度は、全世界における貧困の程度と分布の評価を変える公算が大きいが、貧困の削減率については、それまでの推計と同様か、大きくなる見込みである。
こうした貧困推計の改善と拡充は、近年に多く見られる重要な統計上の発展の好例であり、これによって、ミレニアム開発目標達成に向けた進展度合いの理解は深まることになろう。


『紛争により多数が家を奪われ、貧困に』
紛争で人々が家を追われ、貧困に突き落とされる事態が続いている。
紛争の影響を測る一指標である全世界の難民数は、主としてイラク紛争により、ここ数年急増している。紛争や迫害によって、国内避難民となったり、国外で難民となったりしている人々は現在4,200 万人を超える。そのうち難民は1,600 万人であるが、その内訳は、国連難民高等弁務官事務所UNHCR)が保護責任を負うものが1,140 万人、国連パレスチナ難民救済事業機関の担当するものが460 万人となっている。その他2,600 万人が暴力や迫害によって家を追われながら、自国内にとどまっている。
難民が最も多い地域は南アジア、西アジア、サハラ以南アフリカである。
レバノンとヨルダンでは、難民が人口の10%以上を占めている。イラクとソマリアでは、10 人に1 人が国内避難民である。しかし、この数字だけで、紛争が直接関係のない人々をどれだけ貧困に陥れているのかを十分に伝えることはできない。




■具体的目標
女性や若者を含め、完全かつ生産的な雇用とすべての人々のディーセント・ワークを達成する。


『完全雇用はまだ遠い夢』
貧困の削減は、完全かつ生産的な雇用とすべての人々のディーセント・ワークなしに達成できない。労働年齢人口に就業者の占める割合は、経済の雇用創出能力を測るのに適した指標といえる。とはいえ、人口に対する就業者の最適比率と呼べるものは存在しない。先進国の比率が開発途上国の比率よりも低くなっているのは、労働生産性と所得が高いため、人口全体のニーズを満たすために必要な労働者の数が少ないからである。これに対して、サブサハラ以南アフリカでこの比率が極めて高くなっていることは、雇用の質にかかわらず、貧困層の多くが生存のために働かざるを得ない状況にあることを示している。

この比率を分析し、グループ間の比較を行えば、貧困とディーセント・ワークの不足に対する影響の程度と動向を明らかにすることができる。
ほとんどの地域で、就業人口は労働年齢人口の55%から75%を占めている。北アフリカと西アジアだけがその例外であるが、その裏には、女性の就業人口比率が25%未満(男性の比率よりも40%以上低い)であるという事情もある。多くの場合、女性が就業していないのは、それを選択した結果ではない。これら地域では、社会的に容認され、女性のための雇用がより多く創出され、仕事と家庭の両立を助ける制度が導入されれば、さらに多くの女性が働くことを選択するであろう。

東アジアでは、若者とその他年齢層との間で、就業人口比率に大きな開きがある。他地域のような高い若年失業率こそ見られないものの、東アジアの若者は、教育という将来に向けた投資よりも、働くことを優先させている。


『低貸金雇用で開発途上国労働者の5 人に1 人が貧困に』
今日の世界に暮らす数百万人にとって、仕事はほとんど貧困を逃れる手段とならない。賃金が低すぎるからである。家族がいずれも1 日1 ドル未満しか稼げない世帯に暮らす就業者は「ワーキング・プアとみなされる。サハラ以南アフリカでは、労働者の半数以上がこれに当てはまる。

生産性が向上しない限り、ワーキング・プアの減少は望み薄である。南アジア、東アジアおよび独立国家共同体CIS)では、この10 年間に生産性が年4%以上の向上を遂げた。その結果、これら地域ではいずれも、ワーキング・プアが減少している。対照的に、サハラ以南アフリカでは生産性が全体的に低く、改善も不安定なため、ワーキング・プアはあまり減少していない。

『世界の労働人口の半数に雇用不安』
採算の取れる雇用だけで貧困をなくすことはできない。仕事にはある程度の安定もなければならない。世界の労働者の半数は、突然職を失ったり、自前または公的支援で経費を負担する手段がなかったりすれば、たちまち貧困に突き落とされかねない状況にある。世界の労働人口のうち、不安定な雇用に生計を依存する者の割合は、1997 年の53%から2007 年の50%へとわずかに減少したにすぎない。相変わらず15 億人もの労働者が不安定な職に就いている。不安定雇用の割合が最も高い地域はサハラ以南アフリカで、全体の4 分の3 を占めている。オセアニアや南アジア、東南アジア、東アジアでも、その割合は高い。概して、開発途上地域の女性は男性よりも不安定な雇用状態にあることが多い。南アジア、サハラ以南アフリカ、オセアニア、北アフリカおよび西アジアでは、男女間に10 ポイント以上の差がある。





■具体的目標
1990 年から2015 年までに、1 日1 ドル未満で生活する人々の割合を半減させる。

世界的な食料価格の高騰により、飢餓削減の進展は滞っている。価格急騰には供給の混乱も関係してはいるが、主として食生活の変化、経済成長、世界人口の増加、都市化、食糧作物のバイオ燃料への転用などによる需要の増大、さらには先進国での補助金支給を含む不適切な農業政策によるところが大きい。

食料価格の高騰によって最も大きな影響を受けるのは、貧しい人々である。極端な場合には、貧困ゆえに価格が高騰すると十分な食料が買えず、深刻な飢餓や栄養不良に見舞われる人々もいる。

食糧危機の根本的な原因に対する即効薬はないが、飢餓と栄養不良に直面する数多くの人々にとっては、とりあえずの食料不足に対処する緊急策が必要である。2008 年6 月にローマで開かれた「世界の食糧安全保障に関するハイレベル会合(High-Level Conference on World Food Security)」では、貧困軽減のための具体策が数多く明らかにされた。中でも、緊急食料援助を増やし、貧しい人々が来期の収量を最大限に上げられるよう支援することは、最も急務といえる。


『食料価格の高騰で、子どもの栄養不良緩和のわずかな進展さえ危機に』
低栄養状態にある5 歳未満児の割合は、1990 年の33%から2006 年の26%へと減少した。しかし、開発途上国で体重が不足している子どもの数は、2006 年になっても1 億4,000 万人を超えている。この年齢層での低栄養が、国民全体の飢餓を測る目安である限りにおいて、MDG 目標の達成に十分な進展は見られていないといえる。しかも、食料価格の高騰は世界的な状況をさらに悪化させることになろう。

中国をはじめとする東アジアは、1990 年から2006 年までに体重不足児の割合を半分以下に減らすことに成功した。これに対し南アジアでは、1990 年以来の改善は見られるものの、子どものほぼ50%が依然として体重不足である。この地域だけで、全世界で低栄養状態にある子どもの半数以上を抱えている計算になる。子どもの栄養不良の改善が最も遅れているのは、ほとんどがサハラ以南アフリカの諸国である。

5 歳未満児の体重不足について男女間の差を見ると、これまで女児のほうが男児よりも体重不足の割合が高かった南アジアを含め、全体的に大きな差は見られていない。栄養不良については、農村・都市間の格差のほうが大きな決定要因となっている。平均して、開発途上地域の農村部に暮らす子どもは、都市部の子どもに比べ、体重不足に陥る確率が2 倍に上る。全体として低栄養が減少し、その他ほとんどの開発途上地域の平均を下回っている東アジアでも、農村部の子どもは都市部の子どもに比べ、体重不足に陥る確率がほぼ5 倍に及んでいる。

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