ミレニアム開発目標7 環境の持続可能性の確保(みれにあむかいはつもくひょう7)
■具体的目標
持続可能な開発の原則を、各国の政策やプログラムに反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。
『温室効果ガス排出量の増大を食い止めるためには、直ちに行動が必要』
2007 年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4 次報告書は、気候が温暖化しており、しかも「20 世紀中頃から見られる地球の平均気温上昇は、観測された人為的温室効果ガスの 排出によるものである可能性が極めて高い」ことを十分に明確にした。化石燃料の燃焼によって放出される二酸化炭素(CO2)は、気候変動の原因である温室効果ガス排出量全体の半分以上を占めている。
2005 年、280 億トンに達した二酸化炭素排出量はさらに増大を続け、大気中のCO2 濃度が上昇している。世界全体の排出量は1990 年から2005 年にかけ、30%増大したが、2000 年から2005 年までの年間増加率は、それ以前の10 年間を上回る。1990 年から2005 年までの排出量の動きを見ると、独立国家共同体(CIS)諸国では38%減少したが、東南アジアでは82%増加するなど、一定していない。先進地域のCO2 排出量は一人当たり12 メートルトンと、引き続き最も多いのに対し、開発途上地域では約3 メートルトン、特にサハラ以南アフリカでは0.8 メートルトンと少ない。経済生産単位当たりの排出量は、先進地域において20%を超える減少を示しているが、東南アジアでは35%、北アフリカでは25%と増加している。
気候変動による悪影響を逃れられる地域はないが、北極圏、小島嶼、アジアやアフリカの大デルタ、さらにアフリカ地域全体は、気候変動の影響にさらされやすいこと、住民の適応能力が限られていること、またはその両方の理由により、特に悪影響が及びやすい。
京都議定書の先進締約国は2012 年までに、その温室効果ガス排出量を1990 年比で5%以上削減することに同意した。2007 年にバリ島で開かれた国連気候変動会議では、各国が国連気候変動枠組条約に基づき、200年末までに妥結すべき新たな交渉に着手した。交渉では、気候変動の軽減と、これに対する適応という、同時かつ緊急に取り組みの必要な2 つの側面がともに検討対象となった。資金の注入と投資、および、技術の開発と移転(国家間、地域間でのノウハウと技術の共有)が重要課題として認識された。
エネルギー利用と温室効果ガス排出との相関性を断ち切るためには、エネルギーの供給と利用に関連する技術の効率化と、よりクリーンで再生可能なエネルギー源への移行が必要となる。全世界でのエネルギー需要増大を受け、今後はエネルギー・プロジェクトへの多額の投資が見込まれている。今から行動を起こすことが重要である。現在の投資は、今後数十年間にわたって温室効果ガスの排出パターンを決定づけるからである。
『オゾン層破壊物質の抑制は、気候変動の軽減にも貢献。』
モントリオール議定書により、オゾン層破壊物質(ODS)全体の96%以上が段階的に使用禁止となった。このように、オゾン層保護で定量的な成果が達成されたことは、気候変動対策にも大きな利益をもたらした。モントリオール議定書で規制対象となったオゾン層破壊物質の中には、主要な温室効果ガスも多く含まれていたからである。全世界的なオゾン層保護への取り組みがなければ、ODS の排出による温室効果は全体として、現時点で気候変動の最大原因となっている温室効果ガス、すなわち二酸化炭素の排出に匹敵するものになっていたと見られる。
モントリオール議定書締結20 周年に当たる2007 年9 月、各国政府は現時点で最も広く使用されているオゾン層破壊物質、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の段階的使用禁止期限を10 年前倒しするという合意により、オゾン層保護と気候変動対策という一石二鳥の効果を認識した。また、使用禁止期限の前倒しを達成するため、開発途上国に十分かつ安定的な資金を供与することでも合意した。
■具体的目標
生物多様性の損失を抑え、2010 年までに、損失率の大幅な引き下げを達成する。
『海洋と陸域の保全に対する関心を高めることが必要。』
地球の生物多様性が失われていることを受け、国際社会は陸域と海域の保護を促してきた。その結果、2007 年までに、約2,100 万平方キロメートルの陸域と海域(12 カイリの沿岸域)が保護下に置かれた。魚種資源や沿岸生態系の持続可能性にとっての重要性は大きいものの、全世界の海域のうち保護対象となっているのは0.7%(約200 万平方キロメートル)にすぎない。また、保護だけでは不十分であり、すべての保護区域を実質的に保全できるよう管理することも必要である。
『森林破壊は一段落し、生物多様性保護区に指定される森林も増える。』
森林面積の純損失のペースは鈍化しているが、森林破壊は引き続き、深刻な課題を突きつけている。2000 年から2005 年にかけては、年間約1,300万ヘクタールの森林が伐採されたものの、植林の拡大や景観回復、森林の自然成長により、森林面積の純減はそれ以前の10 年間の年間890 万ヘクタールから、730 万ヘクタールに減少したと見られる。
森林は気候変動の緩和に極めて重要な役割を果たす。また、生物多様性や土壌、水資源を守るとともに、適切に管理すれば、現地の経済や国民経済の活力となり、現在だけでなく、将来の世代の福祉を向上させることもできる。主として生物多様性保護の機能を与えられた森林の総面積は1990 年以来、ほぼ3 分の1 に相当する9,600 万ヘクタールの拡大を遂げ、現在では総森林面積の10 分の1 以上を占めると見られる。こうした保護対象の森林に加え、他の区域でも森林生態系や動植物の保全が広がっている。土壌と水資源保護の機能を与えられた森林の割合も、1990 年の8%から2005 年には9%へと増大したが、この増分を面積に直せば、1990年以来、5,000 万ヘクタールを超えることになる。
『絶滅のおそれのある生物種は急増』
絶滅危険性の動きは、国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト指数」で測ることができる。この指数は、保全措置の成功などによって実質的状況が改善した生物種(IUCN レッドリストにおける区分の変更で測定)と、個体群の縮小など、状況の悪化が見られる生物種との差分を表すものである。分類法の見直しや知識の向上による変化は、この指数に含まれない。鳥類に関する指数を見ると、絶滅のおそれが最も小さいのは北アフリカと西アジアである。逆にオセアニアでは、人間が偶然または意図的に導入した侵入生物種によって、島嶼域の在来種が追い払われ、絶滅のおそれが最も大きくなっている。最近では東南アジアでも、スンダ列島低地部で森林破壊が急速に進んだため、鳥類の生息状況が急激に悪化している。
現在のところ、鳥類に関して最も包括的なデータが入手できるため、他種の生物多様性の動きを探る上でも、これが不完全ながら有用な指標となっている。哺乳動物や両生類、ソテツ、針葉樹など、他の生物種の中には、鳥類よりもさらに絶滅のおそれが高いものもある。
『魚種資源の枯渇を防ぐためには、漁業管理の改善が必要。』
海洋捕獲漁業で過剰利用および枯渇状態にある魚種の割合は、過去20 年間でわずかながら増える一方で、未利用や利用不十分の魚種は減ってきている。新たな資源の活用によって、総漁獲高はほぼ横ばいを続けているが、この現状を維持することはますます難しくなるおそれがある。利用魚種の生産力を高めるためには、漁業管理改善に向けた大がかりな取り組みが必要である。また、水界生態系に対する漁業の影響を軽減するという意味からも、管理対策が要求される。総合的で参加型の生態系アプローチを漁業管理に取り入れれば、こうした懸念に取り組むことができる。この趣旨で、商業種の総許容漁獲量削減、危急種(海鳥、海亀など)の混獲削減、保護海域の設置など、数多くの取り組みが実施されている。しかし、世界的な漁業管理の主目的が漁獲能力の削減にあることに変わりはない。
『世界人口のほぼ半数が水不足に直面。』
過去1 世紀の間、水利用は人口の2 倍のスピードで増加した。世界的な水不足はまだ訪れていないが、世界人口の40%を超える約28 億人が、何らかの水不足問題を抱える河川流域に暮らしている。河川流量の75%以上が取水されるという物理的水不足状態で暮らす人々は12 億人を超える。特に水不足が深刻なのは、北アフリカと西アジアのほか、中国やインドなどの大国の一部地域である。物理的水不足の兆候としては、環境悪化や水の獲得競争があげられる。また、人間の需要を満たすだけの水が現地で自然に調達できるにもかかわらず、人的資本や制度的資本、さらには資金の問題によって水が利用できないという経済的水不足状態にある区域に暮らす人々も16 億人いる。このような状況は南アジアやサハラ以南アフリカで広く見られる。こうした経済的水不足の兆候としては、特に農村住民に関し、水インフラの欠如または未整備、短期、長期の干ばつによる影響の大きさ、安定的な給水の利用困難があげられる。
■具体的目標
2015 年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生施設を持続可能な形で利用できない人々の割合を半減させる。
『改良衛生施設は広く普及するも、目標達成には一層の努力が必要』
1990 年以来、開発途上地域で改良衛生施設を利用する人々は11 億人増加したが、特に東南アジアと東アジアでの改善が著しい。とはいえ、目標を達成するためには、今後7年間で改良衛生施設を利用する人々の数を約16億人増やさなければならない。この数は1990 年から現在までの増加分をはるかに上回る。今でも改良衛生施設を利用できない人々はおよそ25 億人に上るが、そのうち10 億人以上がアジア、さらに5 億人以上がサハラ以南アフリカに暮らしている。2006 年の時点で、国民の過半数が改良衛生施設を利用できない国は54 カ国あるが、その4 分の3 はサハラ以南アフリカの諸国である。
現時点で、世界人口の約半数は農村地域に暮らしている。
にもかかわらず、改良衛生施設を利用できない人々の70%以上は農村住民である。都市部でも、衛生施設の改良は人口増加に追いついていない。サハラ以南アフリカの21 カ国を見ると、改良衛生施設を利用できる人々の割合は、国民の最貧層5 分の1 で16%にすぎないのに対し、最富裕層5 分の1 では79%となっている。
『開発途上地域では、ほぼ4 人に1 人が衛生施設を利用できず』
開発途上地域では、人口のほぼ4 分の1 が全く衛生施設を利用できない。さらに、排せつ物をきちんと隔離し、人間との接触を避けられるようにすることのできない衛生施設を利用する人々も15%いる。屋外での排便は、下痢性疾患やコレラ、寄生虫の蔓延、肝炎その他の関連疾患の危険性を高めるため、その悪影響は個人だけでなく、コミュニティ全体に及ぶ。
屋外での排便は全地域で減少しているものの、南アジアでは人口のほぼ半数、サハラ以南アフリカでも4 分の1 以上で依然として見られる。全世界で屋外排便を強いられている12 億人のうち、10 億人以上は農村部に暮らしている。
『改良飲料水の利用は拡大、しかし、ほぼ10 億人の手に届かず』
1990 以来、16 億人が安全な水を利用できるようになった。このペースが続けば、2015 年までに開発途上地域の89%の人々が改良飲料水源を利用できるようにするという目標は達成できると見られる。それでも、安全な飲料水源のない人々は、現在でも10 億人近くに上る。
最も顕著な前進が見られた東アジアでは1990 年以来、新たに4 億人以上が改良飲料水源を利用できるようになり、普及率は20%上昇した。逆に、なかなか進展の見られないサハラ以南アフリカは、改良飲料水源のない人々の3 分の1 以上を抱えており、目標達成に向けて大きな弾みを必要としている。
2006 年の時点で、開発途上国の都市住民の96%は改良飲料水源を利用しているが、農村部ではその割合が78%にすぎない。改良飲料水を利用できない農村住民は、都市住民の1 億3,700 人に対し、およそ7 億4,200 万人に上る。水道水についても同様の格差が存在し、農村世帯の水道普及率は30%にとどまっている。
『水くみの重荷は女性に』
最近の調査結果は、家に水がない場合、水をくみに行く責任は圧倒的に女性が担っているという事例証拠を裏づけている。女性が水をくみに行くケースは男性の2 倍に上るほか、11%の世帯では子どもが水くみ役となっている。水くみの役割は男児よりも女児が果たすことが多い。
■具体的目標
2020 年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。
『簡単で安価な対策で、多くのスラム居住者の生活を大幅に改善できる可能性』
都市部のスラムに典型的な特徴は4 つあるが、うち2 つは改良衛生施設と給水施設の欠如である。もう2 つは、永住できる住宅と十分な居住面積がないことである。2005 年の時点で、開発途上地域の都市人口のうち、3 分の1 強がスラムに暮らしているが、サハラ以南アフリカでは、この割合が60%を超える。
サハラ以南アフリカのスラム世帯のうち、半数は改良飲料水、改良衛生施設、永続的な住宅、十分な居住面積という4 つの居住条件の2 つ以上を欠いている。この地域でスラム居住者の生活を改善するためには、多額の投資が必要となる。
北アフリカ、アジア、ラテンアメリカの多くの国々では、スラム世帯の大多数が居住条件を一つだけ欠いている。北アフリカはスラムの密集度が最も低いだけでなく、スラムの10 世帯のうち9 世帯は、改良衛生施設または十分な居住面積のどちらかを欠くのみである。また、アジアのスラム世帯のうち、4 分の3 は居住条件を一つ欠くのみであるが、通常は不十分な居住面積または永住不可能な住宅がこれに該当する。サハラ以南アフリカでさえ、居住条件を一つ欠くのみの世帯があるが、この場合の不足条件は主に改良衛生施設である。簡単で安価な対策を講じ、こうした具体的な不足を補えば、多くのスラム居住者の生活改善が一気に進むことになろう。
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