ミレニアム開発目標8 開発のためのグローバル・パートナーシップの構成(みれにあむかいはつもくよう8)
『開発援助は2 年連続で減少、2010 年の公約達成が危機に』
現行為替レートで見ると、政府開発援助(ODA)は2005 年に過去最高の1,071 億ドルを記録して以来、2006 年に1,044 億ドル、2007 年には1,037億ドルへと減少を続けている。これは主として、債務救済額が減ったことによる。価格・為替レート変動調整後の援助供与額は、2006 年から2007年にかけて8.4%減少した。債務救済額を除くと、援助額は不変ドルベースで2.4%増加したことになる。
2005 年の国連世界サミットと関連会合で、先進国は援助額を2004 年の800億ドルから2010 年に1,300 億ドル(2004 年価格)へと増額することを約束した。こうした公約のほとんどは今でも有効であるが、一部の国々にはこれを増減させ、新たな目標値を発表する動きも出ている。債務救済額が2005 年または2006 年の水準に戻ることは望み薄であるため、先進国が2010 年までに公約を達成するためには、二国間援助と多国間開発機関への拠出を大幅に増額する必要がある。しかし、仮に援助額を急増させたとしても、2005 年の公約で暗示された継続的かつ予測可能な公的援助増額を怠った分の埋め合わせはできないだろう。
非政府組織(NGO)や民間企業、多くの開発途上国はますます重要な開発資金源となりつつある。一部については、「エイズ、結核およびマラリア対策のためのグローバル基金」など、特殊目的基金も重要な資金源となっている。
■具体的目標
後発開発途上国、内陸国および小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む。
『2010 年までに対アフリカ開発援助を倍増するためには、大幅な増額が必要』
援助総額は依然として、OECD 開発援助委員会(DAC)諸国の国民総所得(GNI)の0.7%という、国連が設定した目標値にはるかに及ばない。2007 年までにこの目標値をクリアしているのは、デンマーク、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの各国のみである。先進国全体で見ると、ODA の割合は2007 年の時点で、国民総所得の0.28%へと低下している。
後発開発途上国(LDC)は援助総額の3 分の1 程度を受け取っている。これら諸国へのODA は2000 年以来、先進国のGNI を超える成長を遂げているものの、2010 年までにGNI の0.15~0.20%という「後発開発途上国のためのブリュッセル行動計画」に盛り込まれた目標達成のめどは立っていない。
先進工業諸国は2005 年のグレンイーグルス・サミットで、その公約と他のドナーによる公約がともに守られれば、2010 年までに対アフリカODA が倍増すると予測した。暫定的なデータを見る限り、ナイジェリアをはじめとする地域諸国に対する多額の債務救済を除くと、対アフリカ二国間ODA は2007 年に実質9%増となった。とはいえ、グレンイーグルス・サミットでの2010 年予測を実現するためには、アフリカに対する支援をさらに大幅に増額する必要がある。
■具体的目標
開放的でルールに基づいた、予測可能でかつ差別のない貿易および金融システムの更なる構築を推進する。
『大半の途上国にとって、市場アクセスはほとんど改善せず』
開発途上国から先進国への輸出品に対する障壁削減という点で、最近の進展はほとんど見られない。2005 年の世界貿易機関(WTO)繊維協定(World Trade Organization Agreement on Textiles and Clothing)による関連部門の自由化は、開発途上国やLDC の一部に利益をもたらしたが、アフリカのLDC や東アジアの高中所得国の中には、これによって悪影響を受けるものもあった。2005 年12 月、WTO の先進加盟国は2008 年までにLDC からの輸入品目の97%以上につき、関税と輸入枠を撤廃することを約束した。
開発途上国を利する片務協定の中には、地域貿易協定や二国間貿易協定へと発展または転換したものもあるが、開発途上国全体に利益をもたらすような大がかりな取り組みは見られない。武器と石油を除き、先進国市場への無税アクセスを認められた途上国輸出品の割合は、2004 年からほぼ横ばい状態であるばかりか、LDC についてはわずかながら低下している。一部の農産品や繊維、衣類など、さまざまな労働集約的製品について、無税または低率の特恵関税による市場アクセスが認められたことで、LDC は恩恵を受けてきた。しかし、先進国と非LDC 途上国との特恵貿易制度も広がっているため、LDC からの輸出品が先進市場で受けられる特恵マージンは縮小している。
『先進国による国内農業補助金は開発援助を圧倒』
先世界食料危機は、先進国の国内農業に対する補助金と関税による保護の結果でもある。こうした施策は長年にわたり、開発途上国での農業生産を妨げる要因となってきた。自国の農業部門に対する先進国の補助金総額は、2000 年から2004 年にかけて650 億ドル程度増額された後、2006 年までに160 億ドル削減された。とはいえ、このような補助金は依然として3,720 億ドルと、先進国からのODA 総額の3 倍を超えている。開発途上国が国内農業への公的支援を全廃するよう促される中でも、先進国は自国の農業部門に対する支援を続けてきたのである。これは開発途上国の農業生産を阻害し、発展の支援という本来のODA の目的自体を損なっている。
『貿易関連の援助は増額が必要』
開発途上国が生産と貿易の能力を高めることにより、その発展を加速させるためには、技術援助その他インフラ整備などの支援が必要である。これは特にLDC に当てはまる。
ミレニアム開発目標の対象となっている部門に関心を集めている援助国が多い一方で、生産と貿易を推進するための技術協力は、軽視されがちである。例えば、貿易能力育成のための技術援助は2003 年から2006 年にかけ、援助総額の3.6%から3.2%へと減少した。ミレニアム開発目標を達成するためには、約束済みの追加的ODA の供与が必要であり、部門間で資金を再配分することで目標の達成はできない。
■具体的目標
開発途上国の債務に包括的に取り組む。
『開発途上国の債務負担は軽減』
2008 年6 月末までに、適格国41 カ国のうち33 カ国が、重債務貧困国(HIPC)イニシアチブによる債務救済の対象となった。これら33 カ国のうち23 カ国は、債務救済に必要な条件をすべて満たし、救済撤回の可能性がなくなるという「完了時点(completion point)」に到達した。これら諸国は2006 年現在価値で482 億ドルの債務救済を約束されている。完了時点に到達した国々はまた、多国間債務救済イニシアティブ(MDRI)による212 億ドルの追加支援を受けたため、債務返済が一層軽くなった。同時に、低所得国の輸出額は2004 年以来65%以上の増加を見せたことから、減額された債務の支払に利用できる資金も増えた。平均的な開発途上国の対外債務返済負担は、対輸出収入比で2000 年の13%弱から2006年には7%へと低下した。この割合は2007 年も低下を続けると見られるため、投資環境はさらに好転しよう。
■具体的目標
製薬会社との協力により、開発途上国で必須医薬品を安価に提供する。
『入手困難と高値が開発途上国での必須医薬品の普及を阻害』
安価な医薬品の普及には、多国籍企業から後発品メーカー、さらには国内の流通業者に至るまで、製薬関連会社が極めて重要な役割を果たす。一方、政府は医薬品部門に関する国家目標を定め、これを達成するための戦略を明らかにする必要がある。ほとんどの開発途上国は国内的な医薬品政策を設けているが、これら政策の過半数は過去5 年間、全く改定されていないため、これを更新する必要がある。また、ほとんどすべての開発途上国は必須医薬品リストも公表している。この政府公認リストに掲載された医薬品は、公的医療制度で常時、十分な量、適切な服用形態かつ保証された品質で、また、患者個人やコミュニティが購入できる価格で入手できるものとされている。しかし、ほとんどの開発途上国では、厚生施設で安価に、または無償で医薬品を入手できないことが多い。これには資金不足、在庫維持に対するインセンティブの欠如、正確な予測ができないこと、さらには調達、供給および配給面での非効率など、さまざまな原因が絡み合っている。「エイズ、結核およびマラリア対策のためのグローバル基金 」をはじめとする国際的保健基金は、エイズ、結核およびマラリアの治療薬の調達と、その厚生施設への配給を改善する重要な手段となっている。
あらゆる地域において、医薬品は民間セクターのほうが入手しやすくなっているが、民間でさえ入手が困難なこともある。開発途上国約30 カ国を対象とした調査によると、主要医薬品の入手可能性は公共セクターでわずか35%にすぎないのに対し、民間セクターでは63%となっている。しかし、東アジア、東南アジアおよび南アジアの6 カ国では、民間セクターでの入手可能性さえ45%にとどまっている。
一部の製薬会社は、開発途上国の医療制度を対象に、政府や世帯の購買力に合わせた値下げに踏み切った。しかし、公共セクターで医薬品がなかなか手に入らないため、患者が民間セクターで高価な医薬品の購入を強いられることも多い。民間セクターで手に入る後発品でさえ、国際基準価格の数倍に上ることが多く、開発元ブランドの医薬品は、それよりもはるかに高いのが普通である。データが入手可能な開発途上国33 カ国を見ると、民間セクターで最も安い後発品の価格は、国際基準価格の6倍を超えている。民間セクターでの利幅設定の透明化を図ったり、これに対する規制を導入したりする国も出てきた。
後発医薬品は、 高価な開発元ブランドの医薬品に代わる役割を果たすことができる。後発品の利用を促すためには、薬剤師に対し、処方せんに記載された開発元ブランドに代えて、後発品の調剤を認めるのも一案である。後発品による代替政策を導入している開発途上国は、全体の4 分の3 に満たない。その他、後発医薬品の利用を拡大する戦略としては、優先的登録手続き、価格競争の奨励、後発品の品質に対する医師、薬剤師および患者の信頼度向上などがあげられる。
■具体的目標
民間との協力により、情報通信技術をはじめとする先端技術の恩恵を広める。
『携帯電話で開発途上国の通信が拡大』
世界人口100 人当たりの電話加入者数およびインターネット利用者数、1990~2006 年固定電話と携帯電話の加入者数は合計で、1990 年の5億3,000 万人から2006 年末には40 億人以上に増加した。特に携帯電話の普及が著しく、2005 年以来の新規加入者は5 億人を超え、2006 年末時点で27 億人を上回っている。固定電話回線数が少ない地域ほど急速な成長が見られている。アフリカでは、2006 年の携帯電話新規加入者数が6,000 万人を超えており、ほとんどすべての国々で携帯電話加入者が固定電話加入者を上回るようになった。2006 年末の加入者数は2 億人程度であるため、アフリカでは人口の22%が携帯電話を持っていることになる。これに対し、固定電話利用者の割合は3%、インターネット利用者の割合は5%である。技術開発と無線ブロードバンド技術の普及により、先進国と途上国の通信格差を埋める新たな機会が生まれている。
『インターネットは急速に普及するも、最貧地域で立ち遅れ』
人口100 人当たりインターネット利用者数、2000 年と2006 年の比較開発途上地域でインターネットへの接続が可能になれば、健康、教育、雇用および貧困削減に関する目標の達成に役立つ。2006 年末時点で、世界人口の18%強に当たる12 億人がインターネットを利用しているが、デジタル・ディバイドという点での情報格差は依然として大きい。2006 年の時点で見ると、先進国では人口の58%がインターネットを利用しているが、この割合は開発途上国で11%となっており、LDC に至ってはわずか1%にすぎない。先進国でのインターネット利用の急拡大をもたらしたブロードバンド接続も、開発途上地域の多くではなかなか普及が進んでいない。サハラ以南アフリカでは、大半の国々が2006 年になってもブロードバンド・サービスを商用化しておらず、仮にこれが導入されている場合でも、コストが高いために、ほとんどの人々の手には届かない状態にある。
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