アフガニスタン(あふがにすたん)
アフガニスタン・イスラム共和国(アフガニスタン・イスラムきょうわこく)、通称アフガニスタン(アフガン)は、西アジアの内陸に位置する多民族国家。首都はカブール。
パシュトゥーン人、タジク人、ハザラ人、ウズベク人、トルクメン人などの数多くの民族が住む多民族国家である。
西にイラン、南および東にパキスタン、北にタジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンで、国の東端(ワハーン回廊)は中華人民共和国に接する。
■国名
自称国名はAfghānistān ; アフガーニスターン)。ペルシア語・ダリー語で「アフガーン人の国(土地)」を意味する。 正式名称は1973年の王制打倒以来政体が変化するごとに新政権によって改められてきたが、ターリバーン政権崩壊後のロヤ・ジルガ(国民大会議)で定められた2004年憲法による正式名称はダリー語で、(ラテン文字転写 : Jomhūrī-ye Eslāmī-ye Afghānestān , 読み : ジョムフーリーイェ・エスラーミーイェ・アフガーネスターン)という。
公式の英語表記は、Islamic Republic of Afghanistan。通称Afghanistan。日本語の表記は、アフガニスタン・イスラム共和国。通称アフガニスタン。漢字表記は亜富汗斯坦。
■歴史
・ 紀元前6世紀、アケメネス朝ペルシャ帝国に編入され、イランからアフガニスタンの北部周辺と考えられる地域でゾロアスター教が生まれた。
・ 紀元前4世紀、アレクサンドロス大王の征服は、この地にヘレニズム文化をもたらし、古くからの集落であった地にアーリヤ、アラコシア、バクトリアと呼ばれる都市を築いたが、それらは現在もへラート、カンダハール、パルフとして残っている。
・ 紀元前3世紀中頃、アフガニスタン北部からタジキスタン南部にかけてはギリシャ人が建てたバクトリア王国に支配され、次いでクシャーナ朝がこの地に栄えた。仏教とギリシア文化による影響が、イスラム教が伝わるまで反映した。その後、アフガニスタンには様々王朝が勃興し、インド北部へ軍事的進出を繰り返し、インド北部へイスラム教が広がる。一方、アフガニスタン北部及び北西部では、中央アジアのブハラを中心とする経済政治文化の影響を色濃く受けていった。
・ 1747年、パシュトゥーン人によるドゥッラーニー朝が成立。
・ 1826年、ドゥッラーニー系部族の間で王家が交代し、バーラクザイ朝が成立。
・ 1838年、第一次アフガン戦争(~1842年)
・ 1880年、第二次アフガン戦争(~1880年)に敗れ、イギリスの保護国となる。
・ 1919年、アマーヌッラー・ハーン国王が対英戦争(第三次アフガン戦争)に勝利し、独立を達成。
・ 1973年、ムハンマド・ダーウードが無血クーデターを起こして国王を追放。共和制を宣言して大統領に就任。
・ 1978年、軍事クーデターが発生(四月革命)。大統領一族が処刑される。人民民主党政権成立。革命評議会発足。
・ 1979年、ソ連軍によるアフガン侵攻開始。親ソ連派のクーデターによってアミン革命評議会議長を殺害し、バーブラーク・カールマル(元)副議長が実権を握る。社会主義政権樹立。
詳細は「アフガニスタン紛争 (1978年-1989年)」を参照
・ 1987年、ムハンマド・ナジーブッラーが大統領に就任。
・ 1989年、ソ連軍撤退完了(10万人)。国土は荒廃し、食糧事情は悪化の一途。反ソ連ゲリラ(ムジャーヒディーン)と政府軍の間で内戦が勃発。
詳細は「アフガニスタン紛争 (1989年-2001年)」を参照
・ 1992年、ムジャーヒディーンが攻勢、ナジーブッラー政権崩壊(その後ほぼ無政府状態)。
・ 1993年、ブルハーヌッディーン・ラッバーニー指導評議会議長が大統領に就任。
・ 1994年、内戦が全土に広がる。この年ターリバーンが急成長。
・ 1996年、ターリバーンが全土をほぼ掌握し実効支配。旧ムジャーヒディーン勢力が反ターリバーンで一致し、北部同盟となる。またこの年、米国の要請によりスーダン政府はウサマ・ビン=ラーディンをアフガニスタンへ国外追放とし、ウサマ・ビン=ラーディンの率いるアル・カーイダがアフガニスタン国内に入り、ターリバーン幹部と急接近する。翌年、タジキスタン内戦終結を受け、タジキスタン国外に追放されたジュマ・ナマンガニが率いるウズベキスタンの反政府組織ウズベキスタン・イスラム運動(Islamic Movement of Uzbekistan)がアフガニスタンに移動を開始し、アルカイーダと近づく。
・ 1998年、ターリバーンがアフガン全土をほぼ掌握。アフガニスタン・イスラム首長国の成立を宣言するが、承認国は3カ国にとどまる。
・ 1999年、ターリバーンに対する経済制裁を定めた国際連合安全保障理事会決議1267が採択される。
・ 2000年、ターリバーンに対する追加経済制裁を定めた国際連合安全保障理事会決議1333が採択される。
・ 2001年3月6日、ターリバーンがバーミヤンの石仏を爆破する。
o 9月6日、北部同盟のアフマド・シャー・マスード司令官がアルカイーダのメンバーにより暗殺。
o 9月11日、アル・カーイダがアメリカ同時多発テロを起こしたとして10月、アメリカと有志連合諸国は自衛権の発動として攻撃を開始する。また、北部同盟も攻撃を開始する。
o 11月、カブール陥落。年末にターリバーン政権崩壊。
o 12月、ボン合意。アフガニスタン主要4勢力、暫定政権発足とその後の和平プロセスで合意。国際連合安全保障理事会決議1386にもとづき国際治安支援部隊 (ISAF) 創設、カブールの治安維持にあたる。また国際連合安全保障理事会決議1401により、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)がスタート。アフガニスタン暫定行政機構が成立し、ハーミド・カルザイが議長となる。
・ 2002年2月14日、アブドゥール・ラフマン航空観光大臣がカブール空港で暴徒に撲殺される。
・ 2002年、ハーミド・カルザイを暫定大統領に選出。6月、アフガニスタン・イスラム移行国発足。
・ 2004年1月、新憲法制定。
・ 2004年10月9日、初の大統領選挙。カルザイが当選、正式政権アフガニスタン・イスラム国発足。選挙を前にターリバーンが再結成し、南部で武装蜂起。
・ 2005年、総選挙・州議会選挙実施。
・ 2006年、ISAFの指揮権が北大西洋条約機構(NATO)に移譲される。5月、タリバンの攻勢強まる。7月、ISAF南部展開。10月、ISAF東部展開、計13000人がアフガニスタンに駐留。
■政治
アフガニスタンは共和制・大統領制を採用する立憲国家である。現行憲法は2004年1月16日に公布されたもの。国家元首である大統領は国民による直接選挙で選出され、任期は5年。3選禁止。大統領は強力な指導権を憲法により保障されている。副大統領職あり。イスラーム教徒以外大統領にはなれない。そのほかにもクルアーンやシャリーアを法の源泉とする規定があり、アフガニスタンはイスラム国家の色彩が強い。
2009年5月21日カルザイ大統領の任期が切れる。同8月20日に大統領選挙が行われる。この間の大統領職務は現大統領が継続すべきと最高裁判所が判決を出しているが、反カルザイ大統領派は任期満了後はカルザイを暫定大統領とするよう要求している。
行政府たる内閣は大統領が任命するが、議会の承認が必要。首相職は設置されていない。立法府は二院制の国民議会で、憲法により、国家の最高立法機関と規定されている。国民議会は下院に相当する人民議会(ウォレシ・ジルガ)と、上院に相当する長老議会(メシュラノ・ジルガ)で構成される。人民議会は249議席以下と規定され、議員は国民の直接選挙で選出される。任期は5年。長老議会は定数102議席で、5 年任期議員(大統領の任命)、4年任期議員(各州議会の選出)、3年任期議員(各郡議会の選出)が3分の1ずつを占める。
国民議会とは別に、国家主権、安全保障、憲法改正、反乱の鎮圧、甚大な自然災害への対処など、国家の最重要事項に関しては、伝統的な国家意思決定機関である国民大会議(ロヤ・ジルガ)が最高機関として機能する。非常設であり、国民議会議員、州議会議長、郡議会議長で構成。閣僚と最高裁判所長官及び最高裁判所裁判官は、ロヤ・ジルガに参加できるが、投票権はない。
司法府の最高機関は最高裁判所で、その下に高等裁判所などが存在。三審制。
憲法により複数政党制が認められているが、政党政治が根付いていないアフガニスタンでは、政党の活動は低調である。それでも比較的有力なものとして、かつてアフマド・シャー・マスードが率い、現在はブルハーヌッディーン・ラッバーニー元大統領の指導するイスラム協会(タジク人中心)、アブドゥラシード・ドスタム率いるウズベク人勢力のイスラム民族運動、ハザラ人主体のイスラム統一党がある。また、これらの政党は政党連合統一国民戦線(単に国民戦線とも)を結成し、無党派のカルザイ政権に対する野党として活動している。パシュトゥーン人による旧政権勢力ターリバーンやヘクマティヤール派等の反政府活動も存在し、南部の一部を実効支配している。
・アフガニスタン人民民主党 - 社会主義政権時代の執権党
・北部同盟 - 反ターリバーン同盟。現在は統一国民戦線に移行。
■人権問題
純然たるイスラム国家であったターリバーン政権が崩壊した後、カルザイ政権下でアフガニスタンにおける民主主義の構築は一定程度進んだとされる。しかし現在でもアフガニスタンはイスラーム法およびその強い影響下にある世俗法に基づく統治が行われ、非ムスリムへの差別規定があるなどイスラム国家としての色彩が強い。
そのため言論の自由、思想・信条の自由などがしばしば、支配者や聖職者の定義するところの「イスラーム」的な価値観に反するものとされ、シャリーアに基づく背教罪や冒涜罪によって死刑判決が出たこともある。
欧州での生活中にキリスト教に改宗した男性が、これを理由に死刑を宣告された。これに対しては国際社会からの批判が巻き起こり、最終的に死刑判決は撤回されたが、男性は亡命を余儀なくされた。また、女性の権利について、「クルアーンを根拠に女性差別を擁護する人々は預言者ムハンマドの見解を歪曲している」という趣旨の文書を読み、問題提起をしようとした学生に対し、宗教法廷により「冒涜」として死刑が宣告された。これに対しても国際社会は抗議しているが、カルザイ政権も今回は保守派ムスリムの圧力を受け態度を硬化させており、上院では死刑判決を支持する決議が採択された。
■経済
きわめて貧しい国の一つで、農業と牧畜への依存度が高い。経済は近年の内戦による灌漑施設の破壊や、ソ連軍の侵攻やタリバンとアメリカ軍を中心とした多国籍軍との戦闘などの社会的な混乱、旱魃により大打撃を受けている。また同じ理由から国民の多くに食料、衣料、住居、医療施設が不足している。
現在は歳入の大半を国際援助に依存しており、国民の3分の2は、1日2ドル以下で生活している。旱魃地域ではアヘンの原料となるケシの栽培が盛んであり、政府が対策に当たっているが功を奏していない。幼児の死亡率は1000人中257人と高い。2004年10月のユニセフの報告によると、幼児死亡原因の多くは非衛生的な水の飲料使用による慢性的な下痢である。国の衛生状態は極めて悪い状態である。
失業率も極めて高い国であり、ネパール・レソトなどと同じように、40%を超える。
2002年1月に東京で開催された「復興支援国会議」で支援計画が提出され、世界銀行の監督下に45億ドルの資金が集められた。復興の主要対象は、教育、医療、下水施設、行政機関、農業、道路、エネルギー、通信と多岐に渡っている。
■鉱業
アフガニスタンの鉱物資源のうち、もっとも歴史のあるのが紀元前から採掘が続いた青色の宝石ラピスラズリである。首都カブールの東南東190キロメートル、ヒンドゥークシュ山脈山中のサーレサン鉱山 (Sare Sang) 北緯33度55分39秒東経67度13分34秒 が主力。産出量は数トン程度。
有機鉱物資源では北部の天然ガス(4300兆ジュール、2003年)が主力、石炭(3万5000トン)も採掘されている。金属鉱物資源ではクロム(6364トン)がある。このほか岩塩(1万3000トン)も採取されている。アイナック銅鉱山 (Aynak Copper) は70年代初めに発見され、1978年に旧ソ連が中央鉱区と西部鉱区の地質探査を終えている。総資源量は鉱石量7億500万トン、平均銅品位1・56%、銅含有金属量1100万トンの超大型の銅鉱床である。
■交通
交通インフラストラクチャーも度重なる戦乱により破壊され、またはメインテナンスが行なわれていなかった為に現在も復興が行なわれている。なお、多くの先進諸国でみられる様な高速道路網はないものの、主要都市間は舗装された幹線道路によって結ばれており、長距離バスによる移動が行なわれている。 かつては国際列車カイバル鉄道(カブール~パキスタン国ペシャワール間)があったが、戦乱で荒廃し不通となっている。
なお、諸外国との交通は上記の長距離バスによって行なわれている他、カブール国際空港をハブとした国営航空会社のアリアナ・アフガン航空や、その他の乗り入れる外国航空会社の定期便で結ばれている。
■宗教
スンナ派 85%
シーア派 14%
その他 1%
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